円こどもステージ

「円・こどもステージ」ができたわけ...

岸田今日子

...その頃ちょうど幼稚園にいっていた娘と一緒に、
いろんな映画や 芝居を観にいってましたが、
私の方は退屈しちゃうことが多いんですね。
 
まあ一緒に行った母親のためにやっている
わけではないから、仕方ないんですけど。
 
でもそういうのが嫌だった非常にわがままな母親である
私は、 たまたま芝居をやっている。
 
いろんな絵本や童話には大人も楽しめるもの
があるということも知っている。
 
読んでいて思うんですよね、
「ああ、私にはこの謎がわかる、 こどもにはわかんないでしょ、
いい気味だわ。」みたいなことも含めて、楽しみが あるって。
もちろんこどもにしか感じられないものもあるでしょうけど。
 
でも、観にいった芝居の方は
ほとんど最初から最後まで全部こどもに
わかるようにという 考えで作られている。
でもその時にこどもが「あれは何だ」とちょっと思っても、
もしかしたら後になって「ああ、そうだったのか」と思うかも
知れないし、その何だっていう謎が残ったことがひとつ
の喜びになる子もいるんじゃないかと、
まあ、私がどっちかというと そういう子だったので、
勝手に思っちゃいまして。
 
それで母親も一緒に行ったお兄さんやお父さんやお姉さんや、
幼稚園の先生や 近所の人たちも、それぞれの楽しみ方
で楽しんでいただきたいと、非常に欲張りな ことを考えました。
 
それで、とにかくあんまり広いところではやりたくない。
三百人位がいいんじゃないかと思ったわけです。
 
たまたま友人にNHK「お母さんといっしょ」の演出をしていて、
3人目の 子供ができたんで辞めた小森美巳がいた。
それから谷川俊太郎さんが、ポーランド のヤノーシュが書いた
「おばけりんご」という絵本を自分の言葉で新しく作ってくれた。
それが「こどもステージ」の第一回公演でした。
 
それはかなり面白かったと思うの ですが、
「4才から84才まで」とチラシには書いて、
谷川さんのお父さまは 84才で見に来てくださったので、
それは本当だったのですが
 
...(中略)...
 
その後はずっと別役実さんとか佐野洋子さんとか、
こどもの芝居は書いた事がない と言う方を、
なんとか口説き落として、「何でもいいから出鱈目に書いて下されば、
小森美巳がなんとかします」とか言って相当だまして
書いていただいて、ほとんど 創作劇で、もう18本になりました。
 
「円」には、こどもの芝居が好きで、
こどもステージに出るのを楽しみにしている人がたくさんいます。
 
だから私は企画に徹して新しい作家を掘り出したり、
何か面白い絵本なんか 読むと、この方は書けそうだとか、そういう楽しみも
あるものだと思って、 そういう風にして作っています。
 
(1997年6月14日、湘南台文化センター主催 「ワークショップ広場」の講演から)
 

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